その6 ハウスのしつけ

ハウスのしつけは何も難しいことはありません。

ハウスが必要なワケのページでもお話ししてきました通り“犬は狭い場所を好む”という独特の習性を持つ動物なのでハウスのしつけほどカンタンなしつけは他にないと言っても過言ではありません。

そもそもワンちゃんをハウスに慣れさせるだけのことなのに、それを『しつけ』や『トレーニング』と呼ぶこと自体がおかしなことなのかもしれません。

それなのに多くの飼い主さんがハウスのしつけを難しいと感じてしまうのはなぜなのでしょうか?

その理由とは飼い主さんが犬の習性を理解しようとせず、人間的な感覚を無理に押し付けようとしているからなのです。

既に子犬を迎えている飼い主さんならお解り頂けると思いますが、子犬を迎えた時にブリーダーさんやペットショップの店員さんから「お家に着いたらまずはハウスの中で子犬を休ませあげてくださいね」と指示されたはず。

その指示通りハウスに入れて休ませようとしたもののまったく寝てくれる気配など無く、「ワンワン!キャンキャン!」と叫ぶように鳴き続けたワンちゃんは決して少なくないはずです。

 

この状況を見て「この子は狭いハウスを嫌がっているんだ…」と感じてしまう飼い主さんは残念ながらワンちゃんの気持ちを理解出来ていません…。

子犬がハウスの中で「ワンワン!キャンキャン!」と叫ぶように鳴き続ければ確かにハウス自体を嫌がっているように見えてしまいます。

しかしながら、実際に子犬が訴えているのはそういうことではなく、今までと違った場所に連れて来られたことに対する不安な気持ちのアピールか、ただ単に構ってもらいたいというアピールなのです。

そんな不安な状態の中、すぐ目の前に新たな家族となる飼い主さんがいれば『助け』を求めたくなるのは当然のこと。

では、この状況下で飼い主さんは一体どう接してあげれば良いのでしょうか?

はい、その答えは『何もしない』です。

子犬はブリーダーさんのお宅やペットショップではケージ飼いが基本です。

もちろんハウスから出すこともありますが、お部屋で放し飼い状態にするようなことはありませんので子犬は“ハウスの中で過ごすこと”に対して違和感など一切持っていないのです。

それなのに人間的な感覚で「この子は狭いハウスに入れられているのを嫌がっているに違いない!」ととんでんもない勘違いをしてハウスから出してしまう飼い主さんはまさに“子犬のしつけ失敗予備軍”。

その勘違いに気付かずせっかく用意したハウスでのケージ飼いを止めてしまい、結果的にハウスを嫌がるワンちゃんに育ってしまう原因は飼い主さん自身にあるのです。

今、この鳴き叫んでいる子犬にはまず新しい環境に慣れてもらうことが大切なので、どんなに鳴き続けようとハウスで過ごさせてください。

子犬は鳴き疲れればすぐに眠ってくれます。(個体差はありますが、ほとんどの子は30分も鳴き続ければひと眠りします)

それを何度か繰り返せば、必ずハウスが子犬にとって一番安心出来る自分専用の寝床になっていきます。

ハウスの中で鳴き叫ぶ子犬に対しては声を掛けるなどせず、そのまま放っておくのが最もカンタンなハウスのしつけなのです。

また、子犬がハウスにも慣れてきたはずなのにある日突然同じように鳴いてアピールしてくることもあるかもしれませんが、やはりここでも騙されてはいけません。

これは子犬が飼い主さんに対して「鳴いてアピールすれば要求に応えてくれるかな…」と『駆け引き』を試みているだけのこと。

 

この必死に鳴き続ける健気な姿(=本当は様子を伺っているだけ)に負けてハウスから出してしまった時点で飼い主さんは子犬の要求に屈したこと(=勝者は子犬)になり、こういった旨味のある経験を積み重ねていくことによって子犬のアピールはますますエスカレートしていくのです。

それに気付かずそのまま子犬のアピール(わがまま)を受け入れ続けていくと、場合によっては本来あるべき主従関係(飼い主が上位で犬が下位という関係)が逆転して飼い主さんの指示には従ってくれない“わがままなペット”と化してしまう恐れもあります。

飼育初心者さんにとっては慣れないことなので、つい子犬のアピールに応えてしまいそうになるかもしれませんが、子犬にとってのご主人様(ボス)はあくまでも飼い主さんです。

あたふたせずにそのまま放っておきましょう。


具体的なハウスのしつけ方(ポイント)に関しては多くのしつけサイトや書籍で解説されているので細かな点は割愛しますが、基本は飼い主さんと遊び終わった時などハウスに戻す際に「ハウス」と命令(コマンド)を出し、子犬が自らハウスに入って行くながれを想定しながらその動きを介助(後ろからお尻を軽く押すなど)してあげるだけです。

最初は嫌がるかもしれませんが決して怒らず、毅然とした命令口調にボディアクションを交えながら「ハウス」と指示するよう心掛けましょう。

そして、自からハウスに入った場合は声を出して大げさに褒めてあげればOK。

これを続けていくことによって最終的には「ハウス」のひと言だけでハウスに戻れるようになり、こういった積み重ねによって本来あるべき主従関係も自然と構築されていくのです。


既に成犬となっているワンちゃんの飼い主さんで「ウチはハウスのしつけに失敗してしまったのですが…」という方もいらっしゃることでしょう。

でも、ちょっと待ってください。

ひょっとすると先程お話ししたようにただ単に飼い主さんが「ウチの子はハウスが苦手」と思い込んでいるだけかもしれませんので、これを機会に是非チャレンジしてみてください。

物珍しさから久しぶりのハウスをすんなり受け入れてくれるなんてことが意外とあるかもしれませんよ。

「もしそれでもケージ飼いに抵抗感を示したらどうしたら良いの…?」

大丈夫、諦めないでください。

これまでの放し飼い状態とのギャップが大きいので厳しいように感じるかもしれませんが、ワンちゃんが本来持って生まれた“狭い場所を好むという習性”が変わることはないのです。

 

こういった場合、無難な方法としては段階を踏みながら徐々にハウスで過ごす時間を増やしていくことです。

ポイントとしては『ハウスの中では楽しいことがある』という印象をワンちゃんに与えるよう工夫してみること。

その基本として、まずは毎日の食事をハウスの中で与えるようにしましょう。

最初のうちは手っ取り早い方法としておやつなどを利用しても構いません。

そして最も重要なポイントはワンちゃんがハウスの中に入っている時、飼い主さんは一切ワンちゃんに構ってはいけないという点。

『構ってあげない』と言うよりも、ワンちゃんがハウスに入った瞬間から『我が家は犬を飼っていない』という設定で過ごしてみてください。

そうすることによってワンちゃんはひとりでゆっくり休むことが出来るので本能的にハウスの中が自分のテリトリーであることを徐々に理解し、いつの間にかハウスで過ごせるようになるのです。

もちろんワンちゃんたちにも個性があります。

特に成犬は子犬と違って既に性格が形成されているためしつけにおいて“正解”といったものはなく、ワンちゃんの性格やハウスに対する抵抗具合に応じて対応(トレーニング方法)を変えていかなければならないケースもあるでしょう。(これはハウスのトレーニングだけでなくあらゆるしつけにおいて共通して言えること)

それでも“狭い場所を好む”という習性は犬たちにとっての“最大公約数”と言えますので、そのことを忘れずに時間を掛けてでも焦らずじっくりとハウスに慣れさせていくようにしましょう。


以上、ハウスのしつけについてお話ししてきましたがお解り頂けましたか?

それでは、次のページではハウスを用意しない飼育環境で懸念されるワンちゃんの問題行動についてのお話しです。

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